動機
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演習で躓いたので。
問題: Aを正規行列とするとき、次を示せ
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Eは単位行列とする。
[1]: Aの固有値の絶対値が全て1⟺Aはユニタリ行列
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Aの固有値の絶対値が全て1⟹Aはユニタリ行列 の証明
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Aは正規行列なので、ユニタリ行列によって対角化される。
Aがユニタリ行列Uによって対角化されるとすると
U−1AU=U∗AU=λ1λ20⋱0⋱λn∵U∗U=E⟺U∗=U−1
となる。
上記を踏まえて、いま、(U∗AU)∗U∗AUを考えると、これは単位行列Eに等しくなることが分かる。
なぜなら、(U∗AU)∗U∗AUの
(U∗AU)∗とU∗AUの部分に着目すると、後者の対角成分はそれぞれAの固有値になっており、前者の対角成分はそれぞれその共役複素数になっている。
つまり積は
(U∗AU)∗U∗AU=λ1λ20⋱0⋱λnλ1λ20⋱0⋱λn=E∵∀c∈C, cc=∣c∣2⟹λiλi=∣1∣2
となる。
ここで、
(U∗AU)∗U∗AU=U∗A∗U∗∗U∗AU=U∗A∗UU∗AU=U∗A∗AU
と式変形する。
U∗A∗AU=E
の両辺に右からU∗、左からUをかけて
UU∗A∗AUU∗=UEU∗A∗A=UEU∗A∗A=E (∵UE=EU=U)
よってAはユニタリ行列である。
Aはユニタリ行列⟹Aの固有値の絶対値が全て1 の証明
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上の証明を結論から逆に追っていけば示せる。
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[2]: Aの固有値の絶対値が全て実数⟺Aはエルミット行列
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Aの固有値の絶対値が全て実数⟹Aはエルミット行列 の証明
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Aは正規行列なので、ユニタリ行列Uによって
U∗AU=λ1λ20⋱0⋱λn
と対角化される。
よって、(U∗AU)∗は
(U∗AU)∗=λ1λ20⋱0⋱λn
となる。
ここで、仮定より、λiは実数なので、λi=λiである。
したがって
U∗AU=(U∗AU)∗U∗AU=U∗A∗U∗∗U∗AU=U∗A∗U
両辺に左からU、右からをU∗かけて
UU∗AUU∗=UU∗A∗UU∗A=A∗ (∵UU∗=E)
よって、Aはエルミット行列である。
Aはエルミット行列⟹Aの固有値の絶対値が全て実数 の証明
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上の証明を結論から逆に追っていけば示せる。
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おまけ: エルミット行列 エルミート行列
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自分が最初に読んだ本ではエルミット行列と書かれていたのでそっちのほうがしっくりとくるが、エルミートのほうが一般的らしい。
英語では、Hermitian Matrix
と書くが、発音が日本語とかけ離れすぎている。
🔗https://youtu.be/DUuTx2nbizM?feature=shared&t=306