動機 #
前提知識があいまいで理解に時間がかかったので。
問題 #
n次複素正方行列\(\bm{A}\)が正規行列であるための必要十分条件は、\(\bm{C}^n\)が\(\bm{A}\)の固有ベクトルからなる正規直交基底をもつことであることを示せ
解答、証明 #
\(\bm{A}\)が正規行列\(\implies\)\(\bm{C}^n\)が\(\bm{A}\)の固有ベクトルからなる正規直交基底をもつ #
仮定より、\(\bm{A}\)は正規行列なので、ユニタリ行列\(\bm{U}\)で\(\bm{U}^{*}\bm{AU}\)と対角化される。
\(\bm{D} = \bm{U}^{*}\bm{AU}\)とすると、\(\bm{AU}=\bm{UD} \space (\because \bm{U}^{*}=\bm{U}^{-1}) \)
\(\bm{AU}=\bm{UD}\)のままだと理解しにくいので両辺を成分で表す。
\(\lambda_{i}\)は\(\bm{A}\)の固有値、\(\bm{a_i}\)は\(\bm{A}\)の行ベクトル、\(\bm{u_i^{\prime}}\)は\(\bm{U}\)の列ベクトルとして、
$$ \bm{AU}=\bm{UD} \\ \Downarrow $$
$$ \begin{pmatrix} \bm{a_1}\bm{u_1^{\prime}} & \dots & \bm{a_1}\bm{u_n^{\prime}} \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ \bm{a_n}\bm{u_1^{\prime}} & \dots & \bm{a_n}\bm{u_n^{\prime}} \end{pmatrix} = \bm{U} \begin{pmatrix} \lambda_{1} & \\ & \lambda_{2} & & \text{\huge{0}} \\ & & \ddots \\ & \text{\huge{0}} & & \ddots \\ & & & & \lambda_{n} \end{pmatrix} $$
$$ \Downarrow \\ \begin{pmatrix} \bm{a_1}\bm{u_1^{\prime}} & \dots & \bm{a_1}\bm{u_n^{\prime}} \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ \bm{a_n}\bm{u_1^{\prime}} & \dots & \bm{a_n}\bm{u_n^{\prime}} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} u_{11}\lambda_{1} & u_{12}\lambda_{2} & \dots & u_{1n}\lambda_{n} \\ u_{21}\lambda_{1} & u_{22}\lambda_{2} & \dots & u_{2n}\lambda_{n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ u_{n1}\lambda_{1} & u_{n2}\lambda_{2} & \dots & u_{nn}\lambda_{n} \\ \end{pmatrix} $$
ここで両辺の行列の各列に注目する。
例えば1列目に注目すると、
$$
\begin{pmatrix}
\bm{a_1}\bm{u_1^{\prime}} \\
\vdots \\
\bm{a_n}\bm{u_1^{\prime}}
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
u_{11}\lambda_{1} \\
u_{21}\lambda_{1} \\
\vdots \\
u_{n1}\lambda_{1}
\end{pmatrix}
$$
であり、更に変形すると、
$$ \begin{pmatrix} \bm{a_1} \\ \vdots \\ \bm{a_n} \end{pmatrix} \bm{u_1^{\prime}} = \lambda_{1} \begin{pmatrix} u_{11} \\ u_{21} \\ \vdots \\ u_{n1} \end{pmatrix} $$
$$ \Downarrow \\ \bm{A}\bm{u_1^{\prime}} = \lambda_{1}\bm{u_1^{\prime}} $$
他の列も同様にして、 $$ \bm{A}\bm{u_i^{\prime}} = \lambda_{i}\bm{u_i^{\prime}} \space (i=1 \dots n) $$
よって、\(\bm{U}\)の各列ベクトルは行列\(\bm{A}\)の各固有値に属する固有ベクトルである。
ここで、\(\bm{U}\)はユニタリ行列なので、Aの列ベクトル全体は、\(\bm{C^{n}}\)の正規直交基底でもある。(ユニタリ行列の性質)
\(\bm{C}^n\)が\(\bm{A}\)の固有ベクトルからなる正規直交基底をもつ\(\implies\)\(\bm{A}\)が正規行列 #
上の証明を逆に辿り、\(\bm{AU}=\bm{UD}\)を得る。
両辺に左から\(\bm{U}^{-1}\)をかけて、 $$ \bm{U}^{-1}\bm{AU}=\bm{D} $$
(この時点でユニタリ行列で対角化される => 正規行列としてしまっても良いと思うが、一応続けて説明しておく。)
\(\bm{U}\)はユニタリ行列なので\(\bm{U}^{*}=\bm{U}^{-1}\)。
よって、
$$
\bm{U}^{*}\bm{AU}=\bm{D} \\
(\bm{U}^{*}\bm{A}\bm{U})^{*}=\bm{D}^{*} \\
\bm{U}^{*}\bm{A}^{*}\bm{U}^{**}=\bm{D}^{*} \\
\bm{U}^{*}\bm{A}^{*}\bm{U}=\bm{D}^{*}
$$
\(\bm{D}, \bm{D}^{*}\)は両方とも対角行列なので、\(\bm{D}\bm{D}^{*}=\bm{D}^{*}\bm{D}\)が成り立つ。
したがって、 $$ \bm{D}\bm{D}^{*}=\bm{D}^{*}\bm{D} \\ (\bm{U}^{*}\bm{AU})(\bm{U}^{*}\bm{A}^{*}\bm{U}) = (\bm{U}^{*}\bm{A}^{*}\bm{U})(\bm{U}^{*}\bm{AU}) \\ \bm{U}^{*}\bm{A}\bm{A}^{*}\bm{U} = \bm{U}^{*}\bm{A}^{*}\bm{AU} \\ $$
両辺に左から\(\bm{U}\)、右から\(\bm{U}^{*}\)をそれぞれかけて、 $$ \bm{A}\bm{A}^{*} = \bm{A}^{*}\bm{A} $$
よって\(\bm{A}\)は正規行列である。
\(\blacksquare\)