何を調べるのか
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V, Wをベクトル空間、f:V→Wを線形写像として、dim V=n, dim W=mとする。
Vのベクトルv1, …, vkをそれぞれ線形写像写したf(v1), …, f(vk)は一次独立になるのか、一次従属になるのかというのが今回調べることだ。
線形写像の全射、単射と同値な条件を利用しているので忘れていたら🔗関連記事: 線形写像が単射、全射になる必要十分条件を参照してほしい。
一次従属性は常に保たれる
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v1, …, vkが一次従属だと仮定する。
一次関係
c1v1+⋯+ckvk=0V
について、仮定より少なくともあるciが0でない。
両辺をfで写してから線形性を利用して変形すると、
c1v1+⋯+ckvk=0Vf(c1v1+⋯+ckvk)=f(0V)c1f(v1)+⋯+ckf(vk)=0W
という一次関係を考えることができで、ci=0よりf(v1), …, f(vk)は一次従属となる。
よって、fがどのような線形写像であっても、一次従属性は必ず保たれる。
一次独立性は常に保たれるわけではない
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上の証明で
c1v1+⋯+ckvk=0V
から
c1f(v1)+⋯+ckf(vk)=0W
が導かれているのを見ると一見一次独立性も保たれるじゃんと思ってしまうが、実は一次独立性は常に保たれるわけではない。
なぜなら、例えばfがviを0に写してしまったら、ci=0でも等式が成立してしまうので、一次従属に成り下がってしまうからだ。
一次独立性が常に保たれる条件
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では、一次独立性が保たれるのはどんなときだろうか?
実は、fが単射であるとき、一次独立性が保たれることがわかる。
なぜなら、fが単射であればKer f={0}なので、
v1, …, vkについて、
c1f(v1)+⋯+ckf(vk)=0
という一次関係を考えることができる。
この関係はfの線形性から、
c1f(v1)+⋯+ckf(vk)=0f(c1v1+⋯+ckvk)=0
と変形することができる。
そして、fが単射であることから、c1v1+⋯+ckvk=0となり、一次独立性が保たれていることがわかる。
単射でない場合の具体例
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fが単射でない場合は、写した結果は常に一次独立であるとは言えなくなる。
例えば、g:R3→R2, g(a,b,c)=(b,c)という単射でない線形写像を考えると、
(0,1,0),(1,1,0)は一次独立だが、gで写すと、それぞれ(1,0)に写って一次従属である。
他方、(0,1,0),(0,0,1)を写すと一次独立になる。
fが同型写像(全単射)の場合
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同型写像で写した場合は、Wの基底を得ることがわかる。
任意のVのベクトルx∈Vは
x=k1v1+⋯+knvn
とVの基底の一次結合で表すことができて、fで写すと
f(x)=f(k1v1+⋯+knvn)=f(k1v1)+⋯+f(knvn)=k1f(v1)+⋯+knf(vn)
と変形できる。
f(v1), …, f(vn)が一次独立であることは先程の議論で分かっている。
今、任意のVのベクトルをfで写すとこのように表せて、fが全射であるからVのベクトルを全て写せばWが埋め尽くされる、つまり、Wはf(v1), …, f(vn)で生成される。
よって、f(v1), …, f(vn)はWの基底であることがわかる。
結論
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単射、全射であろうとなかろうと、一次従属性は常に保たれる。
単射の場合は一次独立性が常に保たれる。
全単射(同型写像)の場合は基底の組を写すと行き先の空間の基底を得る。