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線形変換の固有値は基底の変更に対して不変である

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数学 線形代数 基底 表現行列 固有値 線形変換
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目次

疑問
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固有値の定義は線形変換 $$ f: V \to V $$ と\(V\)の任意のベクトル\(\bm{v}\)に関して $$ f(\bm{v}) = \lambda \bm{v} $$ を満たすような\(\lambda\)のことだった。

具体的に\(f(\bm{v})\)というのは、\(V\)のある基底を固定したときに、固定した基底に関する\(f\)の表現行列と\(\bm{v}\)を固定した基底の一次結合で表したときの成分ベクトルの積に対応するのだが、線形写像の表現行列は基底の取り方によって変わってくる。

🔗基底の取り替えと線形写像の表現行列の関係

基底を取り替えても固有値は変わらないのだろうか?

というのが今回の疑問だ。

結論から言ってしまうと、基底を取り替えても固有値は変わらない。

というのもそもそも固有値は線形変換に対して定義されているのであって、ある表現行列に対して定義されているわけではない。

ただ、そうは言っても実際に確かめないと納得がいかないだろう。

検証
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いま、\(V\)のある基底\(B_1\)を固定したときに、\(B_1\)に関しての\(f\)の表現行列を\([A_f]_{B_{1}}\)、\(V\)のベクトル\(\bm{v}\)を基底\(B_1\)の一次結合で表したときの成分ベクトルを\(\bm{v}_{B_{1}}\)すると、\(\lambda\)が\(f\)の固有値であるということは $$ [A_f]_{B_{1}} \bm{v}_{B_{1}} = \lambda \bm{v}_{B_{1}} $$ と表せる。

ここで、基底を\(B_{2}\)に取り替える。

\(B_1\)から\(B_2\)への基底の変換の行列を\(P\)、つまり、 $$ B_1 P = B_2 $$ とすると、成分ベクトルの間には $$ \bm{v}_{B_{1}} = P \bm{v}_{B_{2}} \quad (1) $$ という関係があり、表現行列の間には $$ P ^ {-1}[A_f]_{B_{1}}P = [A_f]_{B_{2}} \quad (2) $$ という関係がある。

🔗ベクトル空間の基底と基底の間の関係

🔗基底の取り替えと線形写像の表現行列の関係

そこで、\(P\)が正則行列であることに注意して、 $$ [A_f]_{B_{2}} \bm{v}_{B_{2}} = P ^ {-1}[A_f]_{B_{1}}P \bm{v}_{B_{2}} \quad \because (2) \\ = P ^ {-1}[A_f]_{B_{1}}P P^{-1} \bm{v}_{B_{1}} \quad \because (1) \\ = P ^ {-1}[A_f]_{B_{1}} \bm{v}_{B_{1}} \quad \because PP^{-1}=E \\ = P ^ {-1} \lambda \bm{v}_{B_{1}} \\ = \lambda P ^ {-1} \bm{v}_{B_{1}} \\ = \lambda \bm{v}_{B_{2}} \quad \because (1) $$ と変形できて $$ [A_f]_{B_{2}} \bm{v}_{B_{2}} = \lambda \bm{v}_{B_{2}} $$ を導くことができるので固有値は基底の変更の影響を受けないことがわかる。

編集後記
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ふと疑問に思ってはっきりさせる必要があると思った。

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